ストーリー

ものがたり

15世紀のスペイン。アラゴン地方の伯爵家には幼い二人の息子がいた。弟に呪いをかけたとして、ひとりのジプシーの老婆が
火あぶりに処された。しかし時同じくして弟は行方不明に…。兄であるルーナ伯爵は、今も弟の行方を捜している。
美しい女官レオノーラは、吟遊詩人(トロヴァトーレ)マンリーコと愛し合っている。彼女に想いを寄せる伯爵とマンリーコが鉢合わせし、
決闘がはじまる。ビスカリアの山中では、ジプシーの老婆アズチェーナが火あぶりに処された母親の復讐の機会を狙っている。
呪い、嫉妬、復讐が招く悲劇の結末とは…。

多くのオペラ作品を残した19世紀を代表する作曲家 ヴェルディの傑作のひとつ。
ドラマティックで劇的な音楽がより深い人間感情を表現し、圧倒的な声で紡がれる情熱的な歌が観るもの全てを激情へと駆り立てる。

 

イル・トロヴァトーレについて

・作曲:1851年~1852年 ジュゼッペ・ヴェルディ
・初演:1853年1月19日 ローマ・アポロ劇場にて
・原作:アントニオ・ガルシア・グティエレスの戯曲『吟遊詩人(El Trovador)』
・台本:サルヴァトーレ・カンマラーノ(遺稿)、レオーネ・エマヌエーレ・バールダレ補筆(イタリア語)
・構成:全4幕
・上演時間:約2時間10分

ジュゼッペ・ヴェルディが作曲した全4幕からなるオペラである。
1853年、ローマで初演された。ヴェルディ中期の傑作の一つとされる。

 

おもな登場人物

レオノーラ(ソプラノ)=アラゴン王妃の美しい女官
アズチェーナ(メゾソプラノ)=ジプシーの老婆
マンリーコ(テノール)=放浪の騎士で吟遊詩人(トロヴァトーレ)。
               アズチェーナの息子として育てられているが実はルーナ伯爵の実弟。
               レオノーラとは相思相愛の仲
ルーナ伯爵(バリトン)=誇り高いアラゴンの貴族
フェッランド(バス)=ルーナ伯爵の家臣
イネス(ソプラノあるいはメゾソプラノ)=レオノーラの侍女
ルイス(テノール)=マンリーコの部下
ほか

 

見どころ聴きどころ

●「歌」で力勝負!
とにかくオペラの「歌」の醍醐味を堪能したいなら、この『イル・トロヴァトーレ』がおすすめです。歌の力で、ぐいぐいと客席をねじ伏せる・・・そんな力業を体験できるはず。4人の主要な登場人物がそれぞれソプラノ、メゾ・ソプラノ、テノール、バリトンの四声を受け持ち、オペラ全体の成功が歌手の力量にかかっています。また、合唱にも「アンヴィル・コーラス」として親しまれている陽気な曲や、男声6部合唱の美しい「ミゼレーレ」があり見逃せません。

●名物の「ハイC」
数々の名アリアで目白押しのこのオペラには、レオノーラのアリア「恋は薔薇色の翼に乗って」、アズチェーナのアリア「炎は燃えて」、ルーナ伯爵のアリア「君の微笑み」など聴き所満載ですが、なんといってもマンリーコのアリア「見よ、恐ろしい炎を」が注目されます。このアリアでは、テノールの最高音とも言える力強い「ハイC(ドイツ語でツェーと読む、高い「ド」の音)」が名物になっています。通説ではこれはロンドン初演時のテノール、エンリコ・タンベルリックがヴェルディの許可を得て創始したとされており、以来テノールのアリアとして最大の難曲の一つに数えられています。

●「アズチェーナ」というタイトルだった可能性も・・・
『イル・トロヴァトーレ』は、ヴェルディの前作『リゴレット』、また次作『椿姫』とともに、ヴェルディ中期の傑作として親しまれています。このオペラは、筋が複雑だったり、「呪い」や「復讐」など暗いイメージだったりしたのにもかかわらず、初演のときから大成功を収めました。ヴェルディは特にアズチェーナの役に惚れ込み、オペラのタイトルに彼女の名前を使おうと思っていたときもありました。

 

著名なアリア・重唱など

第1幕
・フェッランドの歌う物語Abbietta zingara, fosca vegliarda
・「穏やかな夜」Tacea la notte placida: レオノーラのアリアとカバレッタ
・マンリーコ、レオノーラ、ルーナ伯爵の三重唱

第2幕
・鍛冶屋の合唱Vedi! Le fosche notturne spogile (通称「アンヴィル・コーラス」)
・「炎は燃えて」Stride la vampa: アズチェーナのアリア
・「君の微笑み」Il balen del suo sorriso: ルーナ伯爵のアリア

第3幕
・「ああ、美しい人」Ah si, ben mio: マンリーコのアリア
・「見よ、恐ろしい炎を」Di quella pira: マンリーコのカバレッタ

第4幕
・「恋は薔薇色の翼に乗って」D’amor sull’ali rosee: レオノーラのカヴァティーナ
・ミゼレーレMiserere: 舞台表のレオノーラ、舞台裏での合唱、マンリーコによる重唱
・「我らの山へ」Ai nostri monti: アズチェーナとマンリーコの二重唱