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東愛知新聞にての連載⑬最終回

東愛知新聞におきまして三河市民オペラの冒険と題しましての連載⑬最終回

新聞掲載のサイトでございますこちらをクリックしてご覧下さい。下記にも同内容を転記してございます。

筆者=昭和音楽大学テアトロ・ジーリオ・ショウワで

【連載】三河市民オペラの冒険〈13〉最終回
「冒険の旅」の目的地
(昭和音楽大学学長補佐・オペラ研究所所長・教授 石田麻子)

 本シリーズのタイトル「三河市民オペラの冒険」は2011年に刊行された書籍の題名だ。「カルメン」公演のまとまった原稿があるとおっしゃるので、ご紹介した出版社に鈴木伊能勢さんとご一緒したのを昨日のことのように思い出す。

 

 伊能勢さんと初めてお会いしたのは、それよりもさらに前の2007年2月に茨城県日立市でおこなわれたフォーラムの場だ。日本各地のオペラ関係者が集う機会だったのだが、パリでのオペラの国際会議から帰ってきた翌日に参加した私の目には、少し雰囲気の違う人のように映った。企業の経営者だと知って納得した記憶がある。そして今日に至るまでお付き合いさせていただいている。

 

 三河市民オペラについては、2022年10月に集英社新書から出版した「市民オペラ」でも大きく紹介した。数年に一度の舞台制作に経営感覚を取り入れたあり方が面白く、また本番に至るまでの発想が、一国を代表するような海外の歌劇場のそれと極めて近いと感じたからだ。制作進行や舞台製作を外注しているとはいえ、支援者へのアプローチをはじめとするステークホルダーたちとの関係づくりなど、リーダーのもとチームで動いていく。

 

 こうして擬似歌劇場のような体制を生み、NHK「プロジェクトX」並みのオペラづくりが実現してきた。テレビでは舞台裏を支える登場人物たちが具体的な目的のために汗と涙を流し、一発逆転の発想でブレークスルーを生み出す過程を描く。視聴者の涙が前提のシナリオだが、既定路線とならないが故に「ドラマ」なのだ。

 

 三河市民オペラはどうか。彼らはこれまで見事な物語を紡いできた。オペラ公演のためにコンサートで収益をあげるという収入確保の考え方、オーディションを公開して盛り上げ、会場を熱気で包み込むことなど、はっきりしている。その明快さが三河市民オペラの魅力であり、歌手をはじめとする応援団が集結、どんどん大きな舞台を作るようになった。そして2023年の「アンドレア・シェニエ」2公演を完売する。なかなか上演されない作品をやりきり、振り返りコンサートも実施した。今はここだ。オペラなんて片手で足りるほどしか観たことがないと言っていた制作委員会の方々だが、舞台への愛情は人一倍に高まっているところだろう。

 

 実はオペラ制作には経営の感覚がモノを言う。商品は誇りをもってマーケットに出す。ただし、制作側が決して商品である芸術そのものに近づきすぎない。それはプロの仕事だと、演出家や指揮者にハッキリ委ねる。こうした分業方式が彼らの特徴だとはいえ、そこには顔の見えるリーダーがいる。こうして芸術家と経営者との絶妙な関係性が強力な磁場を生み出してきた。

 

 しかし、だ。経済・社会環境は大きく変化している。為替変動、地政学リスク、人口減少、気候温暖化は社会と密接につながるオペラづくりとも決して遠い話ではない。時に冷徹に、そして大胆に決断をする必要がある。改善すべき点は徹底的に原因を追究して改めていく。大規模な歌劇場運営であろうが、地域のオペラ団体だろうが、そうした行為には、常に的確な状況分析に基づいた判断が必要となる。社会も団体そのものも転換期を迎えようとしている今、大人の本気をどう示すのか、そして「冒険の旅」の目的地をどこに定めるのか。その冷静な答えが待たれる。 

 

    ◇

石田麻子

 専門は歌劇場政策。文部科学省文化審議会文化経済部会、文化施設部会委員のほか、「日本のオペラ年鑑」編さん委員長、藤沢市民オペラ制作委員会委員などを務め、常に現場に根差した活動をつうじて、国内外の舞台芸術と社会の関係性に現代的な視点で切り込んでいる。2025年5月25日熊本県立劇場「シアターアジア」オープニングシンポジウムに登壇予定。単著に「市民オペラ」「芸術文化助成の考え方」、編著に「新 クラシック・コンサート制作の基礎知識」など。東京藝術大学博士課程修了、博士(学術)。

東愛知新聞にての連載⑫

東愛知新聞におきまして三河市民オペラの冒険と題しましての連載⑫

新聞掲載のサイトでございますこちらをクリックしてご覧下さい。下記にも同内容を転記してございます。

東京六本木、ルイーズ・ブルジョワの彫刻《ママン》の屋外常設展示のもとにて

【連載】三河市民オペラの冒険〈12〉
狂気と正気の狭間で
(演出家・髙岸未朝)

 「芸術は正気を保証する」…これは、代表作《ママン》により世界的な彫刻家となったルイーズ・ブルジョワ(1911~2010年)が生前語った言葉だ。不要不急というスローガンにより芸術を奪われかけた数年前、さまざまな言葉で芸術の意義が語られたが、これほど、しっくりきたものはなかった。この言葉は発信する側にも受信する側にも分け隔てなく、一度でも芸術に心を揺さぶられたことのある全ての人に贈られた言葉だ、と思っている。芸術は、我々が動物として生命を維持することには責任を持たないが、人が人であるための責任を担っている気がするのだ。

    ◇

 オペラというものは、芸術の形態としては、とても変わったシステムを持っている。何しろ毎回の旅路には船頭が二人いるのである。指揮者と演出家だ。そしてこの船頭はそれぞれ、唯一「音を出さない音楽家」であり「本番で仕事をしないスタッフ」なのである。なんだかとっても不思議な訳である。まだ若かりし頃アシスタントとして入った現場では、この二人の船頭が「行き先」でもめる…という狂乱の場面に何度も遭遇した。呉越同舟ならまだしも、もめた挙句にどちらかがいなくなる…などという例も枚挙にいとまがないが、アシストする立場としてはホントに笑い事ではない。こうして、芸術に一家言ある狂気に満ちた人々が同等に協働するのは実に大変なのだ、と随分昔から身に染みてきた。素晴らしい芸術家が集まれば、その数だけ芸術論があるのだから当たり前である。そして、三河市民オペラには素晴らしい芸術家が大勢集まってくる!…ああ、もうその先は言うまい…(笑)。

 そして、これらの騒々しい狂乱の一行を乗せる船を造るのは、それはそれは大変だ。構造は頑丈に、そして繊細に駆動しなければならない。三河市民オペラでは、この船こそが制作委員会なのである。まさに「有り難くも」「有り難い」、つまり「めったになく」「とてつもなく喜ばしい」世界中を探しても一隻しかない貴重な船なのだ。

 <感動>とは、人生において初めて感じる驚きのことだ。しかし悲しい哉、感動は常に困難と同衾(どうきん)している。感動を呼び起こそうとすれば困難も共に起き上がってくる。逆に言えば困難と共存してこそ感動は生まれるのだ。地元の委員会メンバーが総力を上げて困難を乗り越えたからこそ「三河市民オペラ」はオペラ界で名の知れた存在と成り得た。しかしここからが真の正念場である。バスケットボールやサッカーが地域に支えられ、人気スポーツ足り得るのと同じく、三河地域の多くの人々に愛され支えられなければ三河市民オペラは消滅する。しかし一度消えてしまえば、再びいまのブランド力を作りあげることは不可能である。三河市民オペラは、いまはやりの「SDGs(持続可能な開発目標)」を見出し、次の新たな感動を生み出すことができるのであろうか?

    ◇

 芸術は確かに正気と狂気の狭間に存在する。この三者の深い関係は実に見事だ。ルイーズ・ブルジョワはこうも言っている。「私は地獄から帰ってきたところ。言っとくけど、素晴らしかったわ。」 これぞ芸術、これぞ人生なのである。

    ◇

髙岸未朝(TAKAGISHI  MISA)

 東京都生まれ。明治大学文学部演劇学専攻卒業。劇団俳優座研究所文芸演出部修了。両親が画家という環境で幼少時から絵筆を持つ生活を送り、芸術の道へと目ざめる。内外数々の著名演出家のアシスタントを務めるとともに、学生時代より舞台活動を開始し、脚色・演出を手掛ける。活動の場はオペラにとどまらず、演劇やコンサートと幅広く、脚色・ステージング・振り付けと多岐にわたる。現在、東京藝術大学および大学院、国立音楽大学および大学院、相愛大学音楽学部、劇団俳優座演劇研究所各講師。劇団俳優座文芸演出部所属。

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